大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和60年(ネ)897号 判決

本件事故直前、被控訴人真実は、ドッジボールの練習の帰途同級の女児らと共に佐倉支部西側正門前道路を北方に歩いていたところ、控訴人はその背後から自転車で追い抜きながら、ふざけて被控訴人真実が頭上にかかげていたドッジボールを帽子で叩いたこと、その直後同じく自転車に乗って控訴人と行動を共にしていた小野剛(被控訴人真実の同級生)も被控訴人真実に対し同様の悪戯をしたこと、怒った被控訴人真実はとっさに手にしていたドッジボールを小野の背中めがけて投げつけ、二人はその付近で言い争いをしたこと、先行していた控訴人は自転車を止め小野の来るのを待っていたが、やがて被控訴人真実は佐倉支部西北角を右折し、北側の本件道路を通って自宅に向かったこと、控訴人は再び被控訴人真実をからかうつもりで小野とともに被控訴人真実の後ろを追い掛け、小野がまず被控訴人真実を追い抜き、続いて控訴人も道路左側の未舗装部分を通り被控訴人真実を追い抜いたこと、これを見た被控訴人真実はドッジボールを控訴人の背後から控訴人めがけて投げたところ控訴人の頸背部付近に当たったこと(右ドッジボールが控訴人に当たった事実は当事者間に争いがない。)、控訴人はその直後自転車と共に転倒し、背中か腰あたりを先に打ってからアスファルト舗装の道路で頭を打ったこと(控訴人の転倒、頭を打った事実も当事者間に争いがない。)、控訴人は小学校三年生から自転車に乗っていたことが認められる。<中略>

右の事実によれば、脳波異常も結果的には本件転倒による頭部打撲によるものとは認められなかったのであるが、控訴人が本件転倒により頭痛を覚えたこと、当夜吐いたこと、医師の指示もあって長期間にわたり脳波検査等を余儀なくされたということは、本件転倒の結果控訴人に生じた損害といって差支えない。

そこで被控訴人真実につき不法行為が成立するか否かをみるに、前認定のとおり被控訴人真実の投げたボールが控訴人に当たったことも本件転倒の原因となったと認められるべきであるが、控訴人の受けた損害は軽微であるばかりか、前認定の経過によれば、もともと本件事故は同じ学校の児童同志がふざけあっていた際の出来事で計画的な行為でないことは明らかであり、しかも控訴人が先に手を出し、これに対する被控訴人真実の反撃も、たまたま手にしていたドッジボールを投げつけるという子供らしいたわいのないものであるから、行為の態様からみてこの程度の行為は社会生活上非難に価するものではないというべきである。そうすると、被控訴人真実が控訴人に加えた行為は違法性を阻却すべき事由のあるものと解するのが相当であり、したがって、不法行為は成立せず、控訴人について生じた結果は、社会的な道義の問題を出ないというべきである。

(小堀 吉野 時岡)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!